FTR223ブレーキキャリパーオーバーホール

整備記録

サンデーメカニックのFTR223(作業内容)の忘備録です。自分でメンテナンスすると普段から異常に気が付きやすくなり,何より愛車度がぐっと上がります。
整備は道具5割,手順3割です。私の体験談を可能な限り細かく書きますが,メンテナンスの実施は自己責任で行います

必要な工具と交換部品

車種:FTR223(ノーマル) (最後期223-8)

内容:ブレーキキャリパーのオーバーホール

かかった時間:3時間

[8,12mm]レンチ・[5mm]六角レンチ

基本的に使いやすいものを使用すれば問題ありません。スパナよりもレンチの方が舐めにくいです。ラチェットがあると作業がとても速くなります。☆はトルクレンチで回す必要があるものです。

  • 8mmレンチ:ブリーダーボルト用
  • 12mmレンチ:ブレーキキャリパー・オイルボルト用☆
  • 5mm六角レンチ:ハンガーピン用

ラチェットとソケットセットはセットで買ってしまった方がだいぶお得です。セルフメンテナンスに興味があればいずれ必要になるので,これかもう一回り充実したものでも揃えてしまった方が買い足しの手間が少ないです。

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HEXソケットセットです。このメンテナンスでは5mmしか使いませんが揃えておけば買い足しの手間がないです。

トルクレンチ

ブレーキの整備は慎重にしたいですね。楽しいツーリング中に空を飛ばないためにもトルク管理は正確に行います。きっちり締めれば不安なく乗れますからね。
ブレーキキャリパーのマウントボルト締め付けトルクは30N・mです。

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この作業でも使用しています。トルクレンチを選ぶ際は他の作業内容と相談して必要なトルク範囲を網羅できること,ソケットの径が合うかを確認してください。このトルクレンチは値段も手ごろです。

プラスドライバー,マイナスドライバー
  • プラスドライバー:ブレーキキャリパーのカバー用
  • マイナスドライバー:キャリパーシール用 ※こじるために使います。細長い方が使いやすいです。
ゴムハンマー・メタルハンマー

ブレーキピストンなどが硬い場合に使用します。好みのもので良いですが、ブレーキピストンは奥まったところにあるので小ぶりなメタルハンマーが使いやすいですね。

整備のお供(パーツクリーナー・ウエス・ゴム手袋)

整備言えばこれを使わないことはないですね。

  • パーツクリーナーは分解した部品の洗浄に使います。
  • ウエスは部品の洗浄,傷からの保護に使用します。
  • ゴム手袋はオイルを素手で触って肌荒れしないため。使い捨てのゴム手袋が最適。以降,使用するタイミングは提示しませんがオイルを触る場面で使用します。
(研磨紙・ピカール・タッチペン・ソケット変換アダプター) ※必要に応じて

特にブレーキピストンは錆や汚れがあると動きが悪くなるためしっかり錆落としができるようにしましょう。

  • 今回、錆がそれなりについていたのでリューターで削っています。表面が荒くなるので、研磨紙を使っての仕上げが大切です。
  • トルクレンチで様々な径のボルトを締めます。手持ちの工具事情に合わせてソケット変換アダプターを用意します。
オイル・グリス類
  • マシンオイルはよく使いますが、ブレーキ周りは垂れにくいグリスの方が良いです
    使うとしたら分解時の潤滑用でしょうか
  • シリコングリス
    グリス類はお好みですね。鳴き止めグリスがあるといいかもしれませんが、私の経験上はあまり変化がないですね。
ピストンシールセット

オーバーホールするなら交換必須の部品です。純正部品ではシールセットとしてセット販売しています。

  • 純正品番:06431-MA3-405
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ブレーキフルード

具体的な量はわかりませんが継ぎ足しだけなら200mlもあれば十分でしょうか。

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ブレーキパッド

ブレーキパッド(純正)[06455-KPM-016]

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その他必要があれば交換

ブレーキピストン[43107-MAJ-G41]

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キャリパーブーツ[45132-166-016] ※非貫通の方は単品品番がないですね

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締結トルク[N・m]締結部品
30ブレーキキャリパー
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作業手順

ブレーキキャリパーの取り外し

必要なもの:[12mm]レンチ

①ブレーキホースの取り外し

ブレーキホースを取り外します(12mmレンチ)。
ブレーキフルードが漏れてくるので下にオイル受けを置いておきます。

オイルボルトを外します
多少ブレーキフルードが垂れるので受けておきます
基本的にブレーキフルードが全部落ちてくることはありませんが、念のためウエスを巻きました
  • ブレーキを外す前にブレーキレバーの引き代を確認しておくと最後のエア抜きで参考になります。
  • ブレーキレバーを握ったりしなければホース内のブレーキフルードが全部出てくることはないはずですが、念のためオイル受けがあると安心です。
  • オイルボルトワッシャをなくさないように注意してください。

②ブレーキキャリパーの取り外し

ブレーキキャリパーを取り外します(12mmレンチ)。
ブレーキを引きずっているとボルトを緩めても外れないことがありますが、少しづつこじるように動かして外します。

キャリパーマウントボルトを外します
ブレーキを引きずっていたのでボルトを外しても簡単に取れません
ちょっと力をかけて外します
  • この時点でブレーキを引きずっている場合は分解・清掃時の動作確認を十分に行いましょう。

ブレーキキャリパーの分解

必要なもの:[8mm]レンチ、[5mm]六角レンチ、マイナスドライバー、ペンチ、ハンマー

③ピンプラグ、ハンガーピンの取り外し

ブレーキパッドを留めているハンガーピン、さらにその緩み防止をしているピンプラグを外します(マイナスドライバー、[5mm]六角レンチ)。

ピンプラグはマイナスドライバー
ハンガーピンは5mm六角レンチ
ネジ山が空回りするまで回したら引き抜きます
  • ピンプラグは小さいので失くさないように注意してください。
  • ハンガーピンは回し切っても外れないので、最後は頭を摘まんで引っ張ります。

④ブレーキパッドの取り外し

ハンガーピンまで取り外せたらブレーキパッドが取り出せます。

ハンガーピンとピンプラグが抜けたらブレーキバットが取り出せます
取り出すといってもハンガーピンを抜いたら同時に取れます
無事取れました パット残量少ない(汗
  • パッドスプリングを落として失くさないように注意してください。

⑤パッドスプリングの取り外し

パッドスプリングを取り外します。ブレーキキャリパーに挟まっているだけなので引っ張ればとれます。

ブレーキパッドの奥にいます
挟まっているだけなのでつまんで取ります
部品の役割はブレーキ解放時のパッド位置の調整でしょうか
  • パッドスプリングの向きを確認しておきましょう。

⑥ブリーダースクリュの取り外し

ブリーダースクリュを取り外します(8mmレンチ)。

車体取り付け状態で上にあるキャップとボルトがそれ
キャップを外すと回しやすいです
ネジ山の下に小さな穴が開いています 細かい加工ですね
  • ブリーダースクリュはエア抜き用のスクリュです。必須ではないですがついでに掃除しましょう。

⑦フロントキャリパーブラケットの取り外し

フロントキャリパーブラケットを取り外します。単純に刺さっているだけなので引っ張ればとれます。

引っ張ればとれますが負圧のせいで時間はかかります 焦らずゆっくり取ります
外れました
ブレーキダストがたくさんついています
  • 固着気味になっていると力を入れて引っ張る必要がありますが、抜けた際に勢い余って手や部品をぶつけないように注意してください。

⑧ブレーキピストンの取り外し

ブレーキピストンを外します。基本的には引っ張ればとれますが、ブレーキを引きずっていた場合などは多少、力業になります。(ペンチ、ハンマー)。

傷を考えると挟みたくないですが、取れないと整備できないので慎重に
硬いピストンはちょっとずつ横から衝撃を加えたりして外していきます
ピストンも無事取り外せました
  • 引っ張るだけですが錆があったり、ブレーキダストを噛んでいると硬いのでペンチでつかんだり、ハンマーでたたいたり、浸透性のあるオイル塗布などが有効です。
  • 取り外す際のピストンの変形や傷つきに注意してください。
  • どうしても取れない場合はすべて組みなおしてブレーキホースに繋ぎ、ブレーキオイルの力で外してしまうのも手です(エア抜きしないといけないので心配なら初めからやっておくのがいいかもしれませんね)。
    2つあるピストンのうち固着の少ないほうだけ動いてしまうので、片方に金属片などを挟んでおくと硬い方のピストンが外れます。

⑨キャリパーシールの取り外し

キャリパーシールを取り外します(マイナスドライバー)。

ブレーキピストン一つに2つずつシールがあります
キャリパーシールはマイナスドライバーでこじると取れます
清掃後で良いですがシールがない状態でピストンがスムーズに入るか確認します
  • キャリパーシールはピストン一つに形状違いで2個付いています。
  • マイナスドライバーをシールの裏に通して、指とドライバーで挟むと取りやすいです。

⑩キャリパーブーツの取り外し

キャリパーブーツを取り外します。ゴムを変形させて引っ張ればとれます。

貫通している方のキャリパーブーツは頭をつぶしながら取ります (写真が手順が前後してますね)
キャリパーブーツが硬化している場合は交換した方がいいです
  • ゴム部品が変形して嵌まっているだけなので引っ張ればとれますが、勢い余ってぶつけないように注視してください。

ブレーキキャリパーの状態確認・清掃

必要なもの:パーツクリーナー、ウエス、研磨紙

⑪部品の整列/清掃

部品欠がないか確認してください。一通り洗浄と錆落とし、磨きを行います(パーツクリーナー、ウエス、研磨紙)。

7万キロ走ったFTRの部品状態 (部品一覧)

新車からこれまでに交換したのはブレーキパッドのみ。最近チェックできていませんでしたがそろそろ交換した方がよさそうですね。シールは交換しますがブーツはまだ弾力があって問題なさそうです。

ブレーキキャリパー
パーツクリーナーとウエスできれいになりました
シリンダー部にも錆などはないですね
綺麗になると気持ちがいいです
ブレーキピストン
外側は傷、錆で凹凸がないように滑らかに磨きます(錆を落として磨いたところが白くなっています)
ペンチでつかんだので少し傷がついてしまいました
裏はきれいですね
フロントキャリパーブラケット
パーツクリーナーではあまりきれいになりませんでした キャリパー本体より汚れが落ちにくいようです
ボルトは硬いのでやめました 下手に分解して走行中にゆるんでも嫌ですし
スプリングパッド(左)、リテーナー(右)
錆はないですね
ハンガーピン、ピンプラグ、ブリーダースクリュ
ハンガーピン
ピンプラグ
ブリーダースクリュ
オイルボルト、オイルボルトワッシャ、キャリパーマウントボルト
オイルボルト
オイルボルトワッシャ
キャリパーマウントボルト
ブレーキパッド、キャリパーシール
ブレーキパッド
キャリパーシールは弾力的にも劣化を感じませんでしたが一応交換
新品のキャリパーシール
  • 特にブレーキピストンは錆や汚れがあるとブレーキ引きずりの原因になるため錆落としと磨きが重要です。
    また傷をつけてしまうとキャリパーシールを破ってブレーキフルード漏れにつながるため注意してください。
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ブレーキキャリパーの組み立て

必要なもの:[8mm]レンチ、[5mm]六角レンチ、マイナスドライバー、シリコングリス

⑫キャリパーシールの取り付け

キャリパーシールを取り付けます。

ちょっと細かい作業ですが何とか嵌まりました
ピストンの動きをよくするためにグリスを塗っておきましょう
分解したときはついでにシールを交換しておくとトラブル防止になります
  • 一部を溝に入れて指で押さえ、なぞるように嵌め込むと入れやすいです。
  • 潤滑用にグリスを塗布します。ゴム部品なのでシリコングリスがオススメ。

⑬ブレーキピストンの取り付け、動作確認

ブレーキピストンを取り付けます。押し込むだけです。
そのあとピストンを摘まんで前後に動かし、スムーズに動くか確認します。

指で押し込めば入っていきます
いったん奥まで入れてみて、引っ掛かりがないか確認してください
引っ掛かりがあるようであれば再度錆取りや研磨を実施します
  • 面のある方から入れましょう。
  • この時点でうまく動かない場合はピストンが歪んでいたり、傷がついている可能性があります。再度磨きをかけるか、新品交換も検討してください。

⑭パッドスプリング・キャリパーブーツ・フロントキャリパーブラケットの取りつけ

取り外していた部品を取り付けます。取り外しと逆順なので短縮。

パッドスプリング
キャリパーブーツ
フロントキャリパーブラケット
  • パットスプリングの向きに注意しましょう。

⑮ブレーキパッドの取り付け

ブレーキパッドをはめて、ハンガーピン、ピンプラグを取り付けます([5mm]六角レンチ、マイナスドライバー)。

パッドは分解前と左右逆に付けると減り方を均一にできます(タイヤのローテーションみたいなものですね)
ハンガーピンを締めます
ピンプラグを締めます
  • ハンガーピンとブレーキパッドの通し穴の辺りにグリスを塗ると良いですが、パット表面につくとブレーキがかからなくなるので注意してください。

⑯ブリーダースクリュの取り付け

ブリーダースクリュを取り付けます([8mm]レンチ)。

締めすぎに注意してください
  • 軽く締めれば十分です。エア抜きの際に緩めたり締めたりするので締めすぎないようにしてください。
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ブレーキキャリパーの取り付け・エア抜き

必要なもの:[12mm]レンチ、トルクレンチ、[8mm]レンチ、プラスドライバー、ブレーキフルード

⑰ブレーキキャリパーの取り付け

ブレーキキャリパーをフロントフォークに取り付けます([12mm]レンチ、トルクレンチ)。

予めブレーキディスクが入る幅を開けておきましょう
ブレーキキャリパーを取り付けます
  • トルクは30N・mです。

⑱ブレーキホースの取り付け

 ブレーキキホースを取り付けます([12mm]レンチ)。

ワッシャの位置に注意です
ブレーキキャリパーに締め付けます
  • ワッシャが二個あるので忘れずにつけましょう。

⑲ブレーキフルードの補充とエア抜き

マスターシリンダー内のふたを開けつつ(プラスドライバー)、基本的な流れは以下の繰り返し
①ブリーダースクリュを締める
②ブレーキレバーを何度か握る(硬くなるまで)
③ブリーダースクリュを緩めてエアを抜く
マスターシリンダー内のブレーキフルードが無くなる前に適宜補給します。

ブリーダースクリュを緩めるとエアが抜けます 内圧でブレーキフルードが飛び出ることがあるので注意
上からもエアが抜けます
ブレーキフルードが足りなくなるとまたエアを嚙むので適宜補充します
  • ブリーダースクリュを緩めた際にブレーキフルードが飛び出すことがあるため慎重に緩めます。
  • マスターシリンダーからブレーキフルードをこぼさないように注意します。
  • ブリーダースクリュを緩めてもエアが出てこない状態でブレーキを何度か握り、引き代が分解前と同じになればひとまず終了。
  • 引き代が多い場合はブレーキキャリパーをゴムハンマーで叩くなどして衝撃を与えると、残っていたエアがブリーダースクリュから抜けることがあります。
  • まずはバイクを押しながら周辺を歩き、ブレーキをかけてみて問題がないか確認します。絶対に問題がない確信が得られたら実走行して最終チェックですね。
    不安があればバイク屋に連絡する勇気が大切です。
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感想

初めてのブレーキキャリパーオーバーホールですが,何とか最後まで作業できました。
写真を撮ったり昼休憩したりながら4.5時間くらい,実働は3時間くらいだと思います。次回も3時間前後で作業できそうですね。

フロントフォークの時もそうでしたが動きが滑らかになって運転がうまくなったような気分になります。もともと引きずり気味だったので当然ですが。

パッドもそろそろ交換時期といった感じなので、次のパットを選びたいです。

整備の残り2割は手を抜かない忍耐力です。